先生にAI IT 教育現場のAI活用 真の目的は「人間らしさを取り戻すためのテクノロジー」
教育関係者によるフリートーク形式の対談をお届けします。教育支援施設管理者の黒川氏、エピローグコンサルティングの小野寺氏、元高校教員の宇田氏、そしてIT企画の松山氏による、教育現場でのAI活用についての率直な意見交換です。
■ AIは教育をどう変えるのか
黒川: 「今の学校現場では、35人学級でも生徒それぞれの進度が全然違います。ある子は5秒で問題を解いちゃう、ある子は1分かかる。できない子は5分かけても解けない。そういった4~5通りの進度の差が出てくるわけです。」
「そこでAIが進行具合を把握して、早い子にはどんどん例題を追加したり、できてない子にはサポートのヒントを出したり。先生のサポート役として入ることで、先生は見たい子をしっかり見られる。その間も他の子たちは退屈せずに進められる。」
松山: 「実際に私たちの講座でチャットボットを導入したところ、受講生それぞれがボットと対話しながら学習を進めていく、まるで公文式のような形になりました。講師がいなくても各自のペースで学べる環境が自然とできあがったんです。」
■ 教員の業務効率化 – 週35時間の削減も可能に
小野寺: 「実は父が小学校の教員だったのですが、採点業務などは相当な負担でした。今ならAIを使って、通知表作成や成績評価の客観的な部分は効率化できそうです。」
黒川: 「確かに。私たち男性教員なんかは、音楽の評価なんて正直苦手で。『あの子頑張ってたから4かな』みたいな感じで付けていた部分もある。そういった評価はAIの方が専門的にできるかもしれません。」
松山: 「試算では、授業準備、テスト採点、成績処理など、現状の週35時間の業務のうち、AIの導入で約18.5時間、53%ほどの削減が可能かもしれません。」
Claude3.5が出した学校の先生業務効率化の試算
業務内容 | 現状の週当たり時間 | AI活用方法 | 削減可能時間 | 削減率 |
---|---|---|---|---|
授業の教材・指導案作成 | 10時間 | ・教科書内容に基づく指導案ドラフト作成 ・アクティビティのアイデア提案 | 5時間 | 50% |
提出物の採点・添削 | 8時間 | ・記述式答案の下書き採点 ・一般的な誤りの指摘 ・フィードバックコメント生成 | 4時間 | 50% |
成績処理・評価資料作成 | 5時間 | ・データ入力の自動化 ・評価傾向の分析 ・所見文の下書き作成 | 3時間 | 60% |
会議・打ち合わせの議事録作成 | 4時間 | ・音声認識による自動文字起こし ・要点のまとめ作成 | 3時間 | 75% |
保護者向け配布物作成 | 3時間 | ・定型文書の下書き作成 ・文章校正支援 | 1.5時間 | 50% |
生徒指導記録の作成・管理 | 5時間 | ・記録テンプレートの自動生成 ・キーワード抽出による整理 | 2時間 | 40% |
合計 | 35時間 | – | 18.5時間 | 53% |
注意事項:
- AIの導入・運用時間は含まれていません
- 教員のAIツール習熟期間が必要です
- 人間的判断が必要な業務はAI化が限定的です
- 学校のITインフラや予算との調整が必要です
ChatGPT o1 pro modeが出した学校の先生の業務効率化の試算
以下に、教員業務とAI導入による削減効果をまとめた表を示します。
※時間は週あたりの目安。効率化率・削減時間は想定値です。
業務内容 | 従来に要する時間(週) | AI活用による効率化例 | 効率化率(目安) | 削減時間(週) |
---|---|---|---|---|
授業準備(教材研究等) | 約8時間 | 指導計画自動生成、教材自動作成 | 30~50% | 約3~4時間 |
テスト・課題採点 | 約5時間 | マーク式自動採点、記述式の自動評価サポート | 50~70% | 約3時間 |
成績処理・評価表作成 | 約2時間 | 自動集計・標準コメント生成ツール | 50~75% | 約1~1.5時間 |
保護者対応(連絡・面談) | 約2時間 | 自動下書き・問い合わせ内容別テンプレート返信 | 約50% | 約1時間 |
校務関連文書・報告書作成 | 約4時間 | 会議記録自動要約、報告書ドラフト自動生成 | 約50% | 約2時間 |
部活動関連事務 | 約3時間 | 練習計画提案、連絡文書テンプレ生成 | 約30% | 約1時間 |
個別指導・補習準備 | 約2時間 | 個別最適化教材の自動生成 | 約50% | 約1時間 |
生徒指導計画立案 | 約1時間 | ケース記録自動整理・参考事例抽出 | 約30% | 約0.3時間 |
合計削減時間目安: 約13時間前後(10~15時間程度)/週
■ テクノロジーで失われつつある学校の魅力を取り戻す
黒川: 「でも気になるのは、画一化が進んで先生の個性が失われている点です。昔は『あの先生の授業が面白い』とか、先生のジョークを楽しみにしている子どもたちがいた。特に発達に課題がある子なんかは、素晴らしい個性を持っているのに、今の画一的な環境では居場所を失いがちです。」
松山: 「私は中学校の社会科の免許を持っているんですが、例えば地域の歴史を学ぶ時に、『大河ドラマを作ろう』というプロジェクトを考えています。単なる暗記じゃなく、時代背景を調べたり、経済を学んだり。AIは効率化のためだけじゃなく、そういった創造的な学びのサポートにこそ使えるはずです。」
宇田: 「そうですね。先生たちがもっと自由に教育に取り組める環境を作ることが大切。AIで業務を効率化して、その分、先生たちが子どもたちと向き合える時間を増やせたらいいですね。」
■ まとめ – AIは手段であって目的ではない
黒川: 「AIをうまく活用できる人って、意外とアナログ思考の人かもしれません。『学校って面白いよね』『人が集まるって楽しいよね』という本質を大切にしながら、AIを使いこなしていく。単なる効率化じゃない、新しい教育の可能性を探っていく必要がありますね。」
松山: 「その通りです。AIによる業務効率化は入り口に過ぎません。空いた35時間で何をして遊ぶか、どんな新しい学びを作れるか。そこにこそ本当の意味があるんじゃないでしょうか。」
まさに「先生にAI IT(会いてぇ)」。会って話す時間を増やしてください、ということですね。